新しい病原微生物や抗生物質耐性菌が、突如出現し、世間に蔓延することがあります。その一因として、環境変化に伴う病原性の進化や、グローバル化に伴う人・物の往来や渡り鳥の移動が考えられます。私たちは、このような環境中での微生物の進化や生態について、遺伝子情報をもとに研究を行っています。さらに微生物学研究で用いられてきた遺伝子解析技術を応用した環境DNA分析により、大型生物の分布や遺伝的多様性を明らかにする技術の開発も行っています。これらの研究を通じて、人間の健全な生活の保障と生物多様性の保全に貢献したいと考えています。
宇宙居住空間は、微小重力下でかつ宇宙線に曝露される閉鎖環境であるため、人間と微生物の関係が地上に比べて大きく変化する可能性があります。そこで宇宙居住における微生物リスクを低減し、人間と微生物が共生するための基盤となる知見を得るため、①国際宇宙ステーションにおける微生物の現存量、種類、生理状態のモニタリングを通した微生物動態の解明と、②微小重力環境が遺伝子伝播や細胞間コミュニケーションといった微生物間相互作用に与える影響の解明を進めています。
環境水の中に存在するDNAは環境DNAと呼ばれ、そこに棲む全ての生物に由来するDNAが含まれています。私たちは、環境DNAを用い、大型生物の分布や遺伝的多様性を推定する技術の開発を行なっています。この技術は、生物多様性の評価とその保全に向けたツールとして活用されることが期待されます。