疾患の予防および治療のためには、まず疾患の原因を解明しなければなりません。衛生・毒性学講座では、薬学部のうち、食品に起因する疾患と、化学物質の毒性に起因する疾患に関する学習を担当しています。また食品と疾患の接点を異なる視点から捕らえて、健康食品に関する学習と健康食品の情報提供に関する資格試験対策を担当しています。 研究では、食品衛生学と毒性学の講座であることを踏まえつつ、スタッフそれぞれの背景に沿った内容の研究をしています。
食品成分が免疫応答に及ぼす影響を研究しています。最近は特に乳酸菌に着目しています。発酵乳食品の摂取とアレルギーに関連が示唆されながら、その作用機構は良く分かっていません。われわれは、好中球やマクロファージなどの白血球に乳酸菌が作用する結果、アレルギーが抑制されるという仮説を立てて研究しています。画像は、マクロファージ(大きい丸いもの)に、滅菌した乳酸菌(周りのモヤモヤ)を添加して、培養しているところです。
学園祭で「健康食品相談会」を開催し、相談事例の収集と情報提供方法の開発を行っています。本研究の成果をもとに、学生実習で学生に相談技術を指導しています。
図2. 糖鎖の役割
生命現象は、様々な細胞や物質が相互に連絡をとることで生じます。この相互の連絡が阻害されるか、或いは過剰に行われると疾患の発症に繋がります。生体中の連絡に重要な役割を果たす分子として「糖鎖」が挙げられます。糖鎖はグルコースやガラクトース等の糖が鎖状に繋がった親水性の分子であり、その多くは細胞の表面に存在します(図2)。この糖鎖が細胞同士や細胞と物質の連絡を促していると考えられています。また時には毒素やウイルスの受け皿となり細胞に悪い情報を伝えることが明らかになりつつあります。さらに、糖鎖の構造は非常に多様で、生体環境の変化に伴いその構造が複雑に変化することから、バイオマーカーになりうる分子としても期待されています。これらの背景から、糖鎖にフォーカスした薬学研究をテーマとしております。
糖鎖研究は解析技術が未成熟であり研究を進めると多くの分析技術上の課題に直面します。これらの分析技術上の課題を解決するため、新しい技術を開発しながら、その技術を用いて、ウイルス感染症、がん、アルツハイマー病のメカニズムの解析やバイオマーカーの探索進めております。
図3. 糖鎖分析技術による分野横断的薬学研究
アルツハイマー病と糖尿病性認知症における学習記憶機能障害のメカニズムを調べるとともに、認知症の予防薬・治療薬の探索を行っています(図4)。 医薬ビッグデータを解析するツールとして、機械学習・人工知能を用いたレコメンデーションシステムを開発しています。これらのシステムが提案したことを実験により検証し、その結果をフィードバックすることで、システムの改良と機能の拡張を行っています。このサイクルを回すことで、認知症の予防薬・治療薬の探索を行っています。
図4. 認知症の予防薬・治療薬の探索の概要