医療薬学は、病院や保険薬局などで扱う医薬品を、正しく安全に使用することを目的とした学問分野です。薬の副作用や飲み合わせなどを中心とした研究を薬理学と薬物動態学の観点から行っており、医療現場のニーズに応え、それを実際に応用できることを目指しています。現在は、特に抗がん剤が適正に使用されるための情報を発信できるように研究を実施しています。
薬物相互作用は、薬剤師が医療現場で最も多く直面する問題のひとつであり、予期せぬ副作用が出現したり、期待した治療効果が現れないことがあります。そこで、薬物相互作用と用法・用量との関連性、相互作用の発現機序、さらにはそれらの回避方法などを追究したいと考えています。
具体的には、ラットに薬物を投与し、それらの血中濃度を測定して体内動態変動の有無を調べたり、組織中の薬物代謝酵素やトランスポーターの働きや発現量の変化を見ていきます。相互作用を起こし得るものとして抗がん剤、経腸栄養剤やサプリメントなどがあると考えています。血中薬物濃度またはその代謝物濃度の測定が重要となるため、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)などを用いて実験を行っています。
医療現場においてがん化学療法を施行した場合、十分な効果が得られない、あるいは重篤な副作用を生じる可能性がある、など様々な課題に遭遇することがあります。本研究では主に天然化合物に着目して、各種抗がん剤の効能または副作用に影響を与える物質を探索することを目的としています。このテーマでは培養細胞を用いた実験系とラットやマウスを用いた実験系があります。
具体的に、細胞や組織の障害性は臨床検査値、ミトコンドリア活性や組織染色画像などで評価していきます。それと同時に、細胞死の促進や抑制に関連する遺伝子やタンパク質の発現量の変化をreal-time PCR法やWestern blot法などで評価し、必要に応じてそのタンパク質の活性も評価していきます。また細胞や組織の障害性を変動させる物質が見出すことができた場合には、抗がん剤の細胞移行性にも影響するかを評価しています。-MS)などを用いて実験を行っています。
臨床では、正確で迅速な調剤のみならず適正使用のため医薬品の有効性と安全性を保証することが必要とされています。そこで、医療現場から聞こえてくる問題点に耳を傾け、実際にその場で使用されている医薬品の品質を確保する目的で、分光光度計などのいくつかの分析機器を使用して、薬物試料の物性や安定性などを調べることができる簡易的方法の構築に取り組んでいます。