講義では、薬物治療を理解するための一連の科目を主に担当しています。薬物治療を適切に行うためには、まず体の変化を知ることが不可欠です。それには、正常な体の仕組みや働きを理解し(1年/機能形態学B)、様々な疾患の病態や診断に用いる臨床検査の知識(3年/病態検査学、臨床分析化学、生理薬理学実習)が必要です。これらがもととなり、様々な疾患に対する具体的な薬物治療(3年/薬物治療学B、4年/薬物治療学D)の知識に繋がります。
研究では、生化学的な手法、遺伝子解析法、遺伝子発現制御法などを駆使して、非アルコール性脂肪肝疾患の病態解明、抗がん剤の治療抵抗性改善、幹細胞の自己複製制御メカニズムに関する研究を行っています。
DNAチップや次世代シークエンシング技術を用いて、ゲノムワイドな解析を行っています。遺伝子多型、遺伝子発現量、ゲノムのメチル化などについて、遺伝統計学やバイオインフォマティクスの技術を用いて、俯瞰的に病態を解明することを試みています。主にコンピュータを用いた計算が中心になります。実験結果と解析を組み合わせることにより、全体的な変化を明らかにして、病態解明、治療法の開発に繋げていきます(図1)。
図1
患者さんに応じた薬物治療を選択する個別化医療が、特にがん領域で進展しています。特定のタンパク質の発現量の違いや遺伝子変異の有無によって、抗がん剤の治療効果が異なることが知られています。本研究では、種々のがん由来の細胞株を用いて、抗がん剤の治療効果促進または治療抵抗性改善に関わるメカニズムを明らかにし、がん個別化治療に役立てることを目指しています。
脳の神経は成人になっても再生することが近年わかってきました。実は脳にも神経を作る神経の幹細胞があります(図2)。再生医療の分野で重要な役割を担っている神経幹細胞の自己複製に、PARPという酵素が必須であることを明らかにしました。この酵素の阻害剤は、最近、抗がん剤として用いられ注目されています。本研究では、マウスから樹立した神経幹細胞を用いて、PARPが関わる自己複製制御機構をさらに詳細に解明し、再生医療やがん治療に役立てることを目指しています。
図2