当講座のミッションは、<人々のQOLの改善に寄与する研究開発を行うこと> 並びに <実社会において人々のQOL向上に貢献できる人材を育成すること> です。 これを実現するために、モノ作りに関しては、製薬企業で医薬品の製品開発や製剤研究の経験のあるスタッフが研究に従事し、学生に実践的な指導を行っています。また、仕組み作りに関しては、異分野を含めた様々な機関や企業との協同により推進しています。
<楽しめる>は<能力の証し>。学会等での情報発信には学生も積極的に参加し、意欲のある学生は国際学会で発表してくれています。"QOL向上のためには‥"を考え抜き、人々のQOL向上への貢献を楽しみにできる人になっていただく。それが我々の願いです。
当講座では、現在、「バイオ医薬品の経口DDS製剤の研究開発」、「未病に対する医薬・医療機器の研究開発」、「オリゴ乳酸の生理活性に注目した創薬研究」、「新規化粧品・健康食品の研究開発」を主なテーマに研究を行っています。将来は、その成果を人々のQOL向上のツールとして臨床に提供したいと考えています。
核酸医薬品や分子標的薬などのバイオ医薬品は、癌や難病、慢性疾患の治療に威力を発揮する次世代の医薬品として開発が進んでいます。これらのバイオ医薬品は、消化管内の分解酵素の作用やそれ自体の腸管膜での透過性の低さといった理由により、最も患者に負担の少ないとされている経口からの服用が困難とされています。そこで我々は、バイオ医薬品の経口投与を可能とするDDS技術の研究開発に取り組んでいます。 具体的には、核酸分子などの腸管吸収を促進する製剤の新規開発を行っています。この研究を通じて、高脂血症を抑制する遺伝子(核酸)を作用部位である肝臓に効果的にデリバリーする技術の開発や坐剤化に成功しています(図1)。現在は、ナノ微粒子や異形微粒子を利用して、核酸や中分子生理活性物質の腸管膜での更なる吸収改善を実現する新規製剤の開発研究を行っています。
図1
中国最古の医学書「黄帝内経」 によると、「未病」とは「病気に向かう状態」を指し、また、未病の時期を捉えて治すことの出来る人が「医療者として聖人」であると述べられています。高齢化社会の先頭を行く我が国の課題解決策の一つは<健やかな老いの実現>であり、本研究は医療費負担につながる重大な疾病やイベントを未病の段階で予防を可能とする手段を提供することを目指しています。具体的には、生薬やハーブ中の生理作用物質を、医療機関といった特殊環境中はもとより日常の生活環境中にデリバリーする、そのために必要な製剤及び装置の研究開発、とその未病への効果の検証を行っています。現在は血栓症予防を中心に、医学部や病院、企業と連携しています(図2)。
図2
オリゴ乳酸の低分子量領域の薬理活性に関する研究を進めています。 その過程で、図3に示すような嫌気的解糖系抑制、抗アレルギー作用や血糖値降下作用など様々な生理作用を示すことを見出している。このような多岐にわたる生理作用の中に、ミトコンドリアの量的増加、形態学的健常性を観察している。近年、ミトコンドリア機能異常は、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患、ガン、糖尿病、老化現象などの多くの疾患にかかわることが示唆されています。現在は、ナノ微粒子化技術を用いることにより、オリゴ乳酸の生理活性増強を目指しています。
図3
化粧品や健康食品は、製剤学を高度に応用されている一般の方にとって身近な製品です。また、人々がそれらの商品を使用することにより、精神的に生活の質を高めていることは無視できない事実です。講座では、技術的に困難な領域に挑戦し、市場価値の高い化粧品や健康食品を研究開発しています。講座間、学部間の垣根を払い、意欲のある学生を広く集めて、あったら買いたいと思わせる化粧品・健康食品のコンセプト作りから処方検討を行います。