人間社会学部
第9回:心理カウンセラーになりたいけど、資格をとるために・・・
高校生や大学の1~2回生の学生から「カウンセラーになりたいけど、公認心理師とか臨床心理士の資格とるのが大変じゃないですか?」と聞かれることがあります。カウンセラーとは、仕事や職名を指す場合もあります。ただ、カウンセラーの役割は心理専門職だけのものではありません。さて、この学生さんの場合、公認心理師や臨床心理士の資格が必要と思っているようなので、「心理カウンセラー」を目指していると考えられます。
カウンセラー志望の学生から、このような発言が出る理由の1つに「自分は取得するのが大変な資格はとりたくない、でも、カウンセラーになりたい」との主張が含まれていることがあります。要は、「資格のための勉強はしたくないけど、人の相談にのるのは好きだし?、得意だし?、カウンセラーの仕事ができれば・・・」と言いたいのかな?と思う場面が何度かありました。
適切な例え話にはなりませんが、運転免許をもっていなくても車やバイクは運転技術があれば乗れる、との説明に似ているようです。もちろん、無免許運転は違法行為ですし、仮に運転技術があっても無免許運転は当事者だけの問題だけでなく、社会に大きな迷惑をかけることになります。ある地域では自転車を運転するにも免許を義務づけていると聞いたことがあります。技術があっても事故などは自分以外の誰かをまきこむ惨事につながります。
一方、免許があってもペーパードライバーのように運転が得意ではない、あるいは、運転をしないケースもあるでしょう。最近では一定の年齢になると、加齢による自分自身の視力や判断力などの問題で、運転技術に自信がない場合、免許を返納される人が、次第に増えてきているようです。
心理カウンセラーの業務も、この運転免許と運転技術の関係に似ているような気がします。運転免許をもっているからといって、運転がうまいとは断言できませんが、「自分は資格がなくてもカウンセリングはできる」と思ってしまうと、大きなトラブルになる可能性があります。臨床心理士の資格の場合、運転免許と似ているところは5年に1回の更新があります。一定のポイント(これは研修会や学会で集めます)が必要になります。つまり、心理専門職としてのカウンセラーは生涯学習が求められる仕事なのです。
(人間社会学科教員:小西 宏幸)