文学部
歴史文化学科では、「博物館実習」の授業の一環として、大阪府和泉市教育委員会との合同調査を行っています。
例年、和泉市内に所在する寺院などにうかがって、仏像をはじめとする文化財を調査しています。調査の成果は、和泉市史編さん事業のための資料として活用されます。
今年度は、1箇所のお寺にうかがい、計2日間の調査を行いました。
なお、調査にあたっては、マスクの着用や手指の消毒といった感染症対策を徹底して行いました。
では、調査の様子を写真とともにご紹介しましょう。
調査は以下のような手順で行います。
仏像が安置されているお堂に入ると、まず全員で仏壇に向かって合掌して挨拶をします。
その後、仏像を檀から慎重に降ろします。
仏像の調査に伴う一連の作業の過程で、最も緊張感があるのはこの時です。
お寺に安置されている仏像の中には、制作されてから数百年以上の時を経たものも少なくありません。
多くの場合、このような仏像は像の一部が破損していたり、破損しやすい状況になっていたりします。
そのため、仏像を檀から降ろすにあたっては細心の注意を払う必要があります。
無事に仏像を檀から降ろしたら、調査に先立って、像に積もったほこりなどを払います。
仏像やその台座に積もったほこりを払っているところです。表面の彩色や金箔をはがさないように、柔らかい筆を用いて慎重にほこりを払います。
ほこりを払い終えたら、いよいよ仏像の調査を行います。
仏像の調査では、主に調書作成と写真撮影のふたつの作業を行います。
まず、調書作成について説明します。
「調書」とは、調査内容を記録する書類のことです。
仏像調査の調書には、像の名称や所蔵者などを記入したうえで、仏像の高さ・顔の長さ・顔の幅・胸の厚み等々を計測して記入します。
さらに、仏像の形状や構造、保存状態などを観察して、それによってわかったことを記入していきます。
もうひとつの作業である写真撮影では、三脚を据えて、仏像の正面・斜め前面・側面・背面と、像の姿をくまなくカメラに収めます。
写真は教員が撮影しますが、撮影にあたっての仏像の移動やライティングなどは学生が担当します。
写真撮影に用いる機材です。白いバック紙を垂らして仏像の背景としています。
もちろん、学生はいきなりこれらの作業を行っているわけではなく、事前に学内の授業で仏像のレプリカなどを用いて文化財の扱い方や調査方法を学んだうえで、調査に参加しています。
とはいえ、仏像のレプリカを扱うのと、実際にお寺に安置されている仏像を扱うのとでは、緊張感がまったく違います。
そのため、調査終了後はみな非常に疲れた様子でしたが、歴史と信仰の重みを肌で感じる貴重な体験をすることができました。
座学では決して得ることができない、大変貴重な学びの機会であったと思います。
調査を行った2日間はいずれも天気に恵まれました。
その分、かなり暑い中で作業に従事することとなりましたが、誰も体調を崩すことなく、滞りなく調査を終えることができました。
最後になりましたが、調査にあたって大変お世話になったお寺の皆様と和泉市教育委員会文化財振興課の皆様に、深くお礼申し上げます。
(文責:YT)