歴史文化学科の学生が学外授業(歴史観光フィールドワーク)で大阪市の歴史的近代建築物を見学に行ってきました。6/3(土)  その1

お知らせ
2023.07.07

文学部 

歴史文化学科の学生が学外授業(歴史観光フィールドワーク)で大阪市の歴史的近代建築物を見学に行ってきました。6/3(土)  その1

第3回目のフィールドワークは、大阪市の歴史的近代建築物の見学です。国の重要文化財に指定されている綿業会館や高島屋史料館のある高島屋東別館、有形文化財に指定されている生駒ビルヂングや新井ビルなどを巡り、その歴史と観光資源としての活用状況について学びました。

最初に綿業会館前で集合したあと館内に入り、吉山裕二総務部長からレクチャーをしていただきながら見学をはじめました。ここは会員制の倶楽部のため、一般の見学には予約がいります。

綿業会館は、現在の東洋紡株式会社の当時専務取締役であった岡常夫が「繊維業界発展のために私財を使ってほしい」との遺言を残し、遺族から私財が寄付されたことをきっかけに、関係業界からの寄付も受け、昭和6(1931)年に紡績繊維関係者の集える倶楽部(集会所)となる「日本綿業倶楽部」の建物として竣工しました。設計には近代日本を代表する建築家 渡邊節、ヘッドドラフトマンには村野藤吾が参画しています。

最初に入った玄関ホールはイタリアルネサンス調に装飾されており、イタリアから取り寄せた大理石やトラバーチンの石材が使われ、ミラノのスカラ座にあるロビーの照明を模して造られたという豪華なシャンデリアが目を惹きます。

階段を昇って向かった先は、各部屋の中でも最も豪華で素晴らしいといわれている本館3階の談話室です。イギリスの初期ルネサンス風のジャコビアン・スタイルの豪華な内装でまとめられており、3,4階と吹き抜けの部屋になっているのも特徴です。

また、暖炉やパイプオルガンを模した設えの美しさにも驚かされますが、その横の壁一面に並べられたタイルタペストリの精巧さは素晴らしいものです。タイルは京都東山にかつてあった泰山製陶所で焼かれた「泰山タイル」です。装飾には5種類の模様のタイルだけを使っていますが、同じ模様でも焼いた温度によりタイルの色合いが1枚1枚異なって出来上がり、それを絶妙な間隔で配置することによって美しい調和を引き出しています。

この談話室は昭和7(1932)年にリットン調査団が満州事変の調査のために来日し、大阪を訪れた際に情報交換をした部屋でもあります。当時の写真が飾られており、その様子を伺うことができます。

綿業会館は、機能面からも優れており、冷暖房の設置では、井戸水による冷風送気やボイラー設備の設置など、当時最先端の空調設備の技術を取り入れています。また、窓にはフランス製の鉄鋼ワイヤー入りの耐火ガラスが使用され、戦時中に周辺を襲った爆撃などによる火災から建物を守ることができました。

同じ本館3階には、貴賓室とも呼ばれる特別室があります。18世紀初めのイギリスでアン王女の時代に好まれた様式で、クイーン・アン・スタイルと呼ばれています。窓や壁が直線的であるのに対して、天井、家具の曲線が上手く組み合わされています。シャンデリアなど開館当初のものが多く残されています。

最後に見学した会議室はフランスのナポレオン帝政時代に流行したアンピール・スタイルでまとめられた部屋です。室内は、ギリシャ、ローマ時代を模範として、天井、壁、開口部の装飾を抑えているのが特徴です。床の天然石にはアンモナイトの化石が入っており、貴重な木目調の大理石も利用されています。

みんなで、アンモナイトの化石を探しています。

あっというまに、1時間という見学時間が過ぎ、充実した時間を過ごすことができました。

各部屋が異なった様式になっているのを見てきましたが、これは、世界各国の来賓者や倶楽部会員の好みに応じた部屋を造りあげた成果です。

最後に綿業会館前で集合写真を撮りました。手前にみえるガス灯が往時を偲ばせてくれます。

次は船場界隈の堺筋にある近代建築物を歩いて巡ります。

ここからは、次(その2)のブログでご紹介します。

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