【薬学部 臨床薬剤学講座、薬物治療学講座】薬学部 薬物治療学講座の 小堀 宅郎 講師が第 16 回 日本在宅薬学会学術大会において最優秀演題賞を受賞しました

お知らせ
2023.07.18

薬学部 

【薬学部 臨床薬剤学講座、薬物治療学講座】薬学部 薬物治療学講座の 小堀 宅郎 講師が第 16 回 日本在宅薬学会学術大会において最優秀演題賞を受賞しました

本学 薬学部 薬物治療学講座の 小堀 宅郎 講師(前 臨床薬剤学講座 所属)が、2023 年 7 月 16 日~17 日に神戸国際会議場(神戸市)にて開催された 第 16 回 日本在宅薬学会学術大会において、最優秀演題賞を受賞しました。
膵臓がん、卵巣がん、胃がん等の終末期にみられる難治性腹水は、腹腔内圧亢進による強い腹部膨満感(お腹の張り)や呼吸困難等の多彩な機能障害を来し、日常生活動作を著しく低下させます。近年、難治性腹水に対する新たな治療手段として、腹水濾過濃縮再静注法(CART)が普及しつつあリます。CART は患者さんから採取した腹水原液中に含まれるがん細胞や細菌等の不要な成分を除去し、必要なタンパク質等を濃縮後、濃縮腹水を再静注する血液浄化療法です。CART による治療は数時間で完了することから、従来の腹水治療で課題となっていた長期入院の回避を実現し、地域医療における在宅緩和ケアの推進が期待されています。一方、がん性腹水中にはがん細胞のみならず、様々な液性因子に加え、白血球の一つであるマクロファージをはじめとした免疫に関連する多くの細胞が存在しています。このことから、がん性腹水はがん微小環境を反映する新たな免疫微小環境として注目されています。マクロファージは腫瘍壊死因子-α 等の炎症促進性またはインターロイキン-10 等の炎症抑制性サイトカインによって各々誘導される抗腫瘍性の M1-様、腫瘍増殖性の M2-様に大別されます。そこで本研究では、のぶまさクリニック(京都市、高垣 伸匡 院長)にて CART を施行された膵臓がん患者由来の腹水微小環境が、マクロファージの分化状態と患者の生命予後へ及ぼす影響を明らかにすることを目的として、ヒト由来マクロファージ様の細胞株を用いた細胞培養実験ならびに膵臓がん患者由来の腫瘍組織および正常組織検体における網羅的な遺伝子発現解析結果を統合する GEPIA データベースを用いたバイオインフォマティクス解析を実施しました。その結果、CART 施行前後の膵臓がん患者の腹水微小環境において、マクロファージは腫瘍増殖促進性の M2-様の分化状態にあり、特に CART 施行後の濃縮腹水微小環境では、M2-様の分化が増強しており、このことが、膵臓がん患者における生存率の低下に少なくとも一部関与する可能性を見出しました。今後、例えば CART 施行後の濃縮腹水に、マクロファージの M2-様分化を抑制するような医薬品を添加する等の処置により、腹水中の "免疫微小環境" を抗腫瘍性に調整することが、CART による治療効果を一段と高め、将来的に在宅緩和ケアのさらなる推進と健康寿命の延伸に繋がることが期待されます。

受賞演題: 腹水濾過濃縮再静注法の施行前後における膵臓癌患者の腹水中免疫微小環境の解析
演 者: 小堀 宅郎¹、伊藤 優衣¹、田中 千都²、浦嶋 庸子¹、山村 智代²、高垣 伸匡³、小畑 友紀雄¹
1. 大阪大谷大大学 薬学部 臨床薬剤学講座
2. 医療法人徳洲会 野崎徳洲会病院 薬剤部
3. のぶまさクリニック

問い合わせ先(研究に関すること):
薬学部 臨床薬剤学講座 准教授 小畑 友紀雄
E-mail: obatatoki[at]osaka-ohtani.ac.jp
薬学部 薬物治療学講座 講師  小堀 宅郎
E-mail: koboritaku[at]osaka-ohtani.ac.jp