薬学部
本学薬学部 5 回生 伊藤 優衣 さん(臨床薬剤学講座 所属)が、2023 年 6 月 11 日に同志社女子大学 京田辺キャンパス(京田辺市)にて開催された 日本医療薬学会 第 6 回フレッシャーズ・カンファランスにおいて、優秀発表賞(口頭発表の部)を受賞しました。
免疫チェックポイント分子の PD-1/PD-L1 等を標的とする抗体医薬品は、がん免疫療法のさきがけとして様々な進行・再発性の癌症例に優れた臨床効果をもたらしています。一方、膵臓がんに対する治療効果は限定的であることから、既存薬とは作用機序の異なる新たな治療標的の探索が求められています。本研究において 伊藤 さんは、膵臓がん細胞の表面に高発現する"自然免疫"チェックポイント分子 CD47 に着目しました。CD47 は、白血球の一つであるマクロファージによるがん細胞に対する貪食活性を抑制するはたらきを持っています。そこで、膵臓がんの組織型として 90%以上を占める膵臓管状腺がん患者由来のがん細胞株を用いた実験を行い、細胞表面における CD47 の発現レベルが、細胞内の "足場" タンパク質と呼ばれる Radixin によって調節されることを突き止めました。さらに、米国国立がん研究所および米国国立ヒトゲノム研究所が提供するがん臨床検体のデータベース TCGA を用い、膵臓管状腺がん患者の腫瘍組織中における CD47 と Radixin の遺伝子発現量が正の相関性を示すことに加え、CD47 と Radixin の高発現が予後不良因子となることを明らかにしました。本研究成果により、CD47 の足場タンパク質 Radixin を治療標的とすることで、難治性の膵臓がんに対する新たな自然免疫チェックポイント阻害療法の開発に貢献できる可能性を提唱しました。
■ 伊藤 優衣 さんのコメント
『学会発表のプレゼン資料作成にあたり、背景となる情報を視覚化して聴衆に分かりやすく伝える工夫や論理的な構成を考えるのに苦労しました。そんな時、講座の先輩方からアドバイスをもらい、レイアウトやセリフの修正を何度も何度も繰り返しました。プレゼン資料の完成後には、発表練習と質疑応答対策に多くの時間をかけて準備しました。その際、講座のメンバーに聞いてもらいながら、たくさんのフィードバックを受け、聴衆に訴える声の大きさ、話のスピード、理解しやすい表現を意識して修正作業を繰り返しました。時間をかけてしっかりと準備をしたことで、学会本番の緊張感のある雰囲気の中でも、自信を持って堂々と口頭発表を行うことができました。これまでの練習の成果が実り、優秀発表賞を受賞することができて感動しています。また、医療現場の薬剤師の先生方や他大学の学生・大学院生の優れた研究発表を聴講し、私も研究マインドを持った薬剤師を目指そうと強く思いました。次回の学会発表では、聴衆の記憶に残るような研究成果を発表したいと思います。』
受賞演題: Radixin は膵臓癌細胞における自然免疫チェックポイント CD47 の膜局在を調節する
発表者: 薬学部 臨床薬剤学講座 5 回生 伊藤 優衣
問い合わせ先(研究に関すること):
薬学部 臨床薬剤学講座 准教授 小畑 友紀雄
E-mail: obatatoki[at]osaka-ohtani.ac.jp