4月7日、プレスリリース

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2023.04.07

薬学部 

4月7日、プレスリリース

琵琶湖の重要魚種ホンモロコの遺伝的多様性を環境DNAで一挙に評価!保全への活用に期待

本学薬学部の内井喜美子准教授と脇村圭助教らは、琵琶湖に生息する絶滅危惧種ホンモロコの遺伝的多様性を正確かつ迅速に推定する環境DNA分析手法の開発に成功しました。さらに、琵琶湖一円で本手法を用いた調査を実践し、湖の東部や南部に比べ、北部における遺伝的多様性が低いことを明らかとしました。迅速かつ簡便な絶滅危惧種の健全性評価法として、将来の生物多様性モニタリングにおける活用が期待されます。

この成果は、4月3日(アメリカ東部標準時間)付けで国際科学雑誌『Environmental DNA』に掲載されました(https://doi.org/10.1002/edn3.408)。
Wakimura K, Uchii K, Kikko T. Evaluation of genetic diversity in an endangered fish Gnathopogon caerulescens using environmental DNA and its potential use in fish conservation.

琵琶湖の美味しいお魚、ホンモロコ。1990年代中頃の個体数減少により、絶滅危惧種に指定されている。(撮影:内井 喜美子)

 

生物の個体数の急激な減少は、その集団が持つ遺伝的多様性の損失を引き起こすことが知られます。つまり遺伝的多様性の低下は個体数減少のサインとなるため、遺伝的多様性レベルから集団の健全性を評価できる可能性があります。本研究で対象としたホンモロコは、食用として人気があり、琵琶湖漁業における重要魚種です。その一方、1990年代中頃に個体数が急激に減少した結果、絶滅危惧種に指定されるに至りました。持続的に本種を利用していくために、その保全が重要な課題となっています。

内井准教授らの研究チームは、ホンモロコ集団の健全性を遺伝的多様性を手がかりとして効率よく評価する手法の開発に取り組みました。そして、水から取り出したDNA(環境DNA)に含まれるホンモロコDNAの塩基配列を、超並列シーケンスと呼ばれる方法で解読することにより、本種の遺伝的多様性を迅速かつ正確に推定する手法の開発に成功しました。さらに、本手法を琵琶湖一円で実践し、湖の東部(伊庭内湖・西の湖)や南部の集団に比べ、北部集団の遺伝的多様性が低いことを明らかとしました。この結果は、個体数減少が北部において顕著であった可能性を示唆しました。

開発した環境DNA分析手法の利点は、ある場所で採取した環境DNAサンプルを分析すれば、そこに生息する多数個体のDNA情報を一挙に取得できることです。つまり、従来の一個体ごとの遺伝子解析に比べ、非常に効率よく集団の遺伝的多様性を推定することが可能となります。保全において重要となる迅速性を実現できる点で、絶滅危惧種の健全性モニタリング法として実用化が進むことが期待されます。

プレスリリース内容は >>>こちら

内井 喜美子 大阪大谷大学 薬学部准教授のプロフィールは >>>こちら
脇村 圭   大阪大谷大学 薬学部助教のプロフィールは  >>>こちら