大学というところは、専門的な知識や技術を深める「学びの場」であると同時に、多様な人々と出会い、共に成長する「生活の場」でもあります。教室での学びはもちろん、クラブ活動やボランティア、インターンシップ、地域連携プロジェクトなど、学内外での経験はすべて「学び」の一部です。ここで得られるものは、単なる資格やスキルではなく、社会を生き抜くための「人間力」そのものです。
皆さんは今、「子どもから大人への移行期」にあります。これは、自らのアイデンティティを模索し、「自分とは何か」を問い続ける時期です。大学での挑戦や失敗、友人との議論、時には孤独な思索が、揺るぎない「核」を形成していきます。悩みや葛藤があるからこそ、自分の特徴や価値観が見えてくるのです。
本学の教育理念「自立」は、経済的自立と精神的自立の両輪で成り立ちます。前者は専門知識の修得によって、後者は多様な経験を通じた自己理解によって育まれます。例えば、サークル活動でリーダーシップを発揮する経験は「自分の得意不得意」を自覚する機会に、地域連携活動は「他者との協働」の重要性を学ぶ場となるでしょう。近年、大学は地域社会と切り離せない存在です。キャンパスの周囲で暮らす方々や他大学との交流は、私たちの活動を支える基盤です。迷惑をかけないという消極的な姿勢ではなく、積極的に地域に貢献し、「共生」の精神を実践してほしい。この意識が、グローバル社会で他者を尊重する力へと繋がります。
未曾有の災害や社会変動が日常化する時代、柔軟に物事を捉える力が不可欠です。授業で壁にぶつかった時、人間関係で悩んだ時、ぜひ両面から考えてみてください。「なぜこの出来事は自分に起こったのか?」という問いが、新たな視点を生み出します。
大学には、皆さんの成長を支えるサポート体制が整っています。学生課やキャリアセンター、保健室など、必要な情報はこのハンドブックに網羅されています。しかし、情報は待つのではなく「自ら取りにいくもの」です。ネット検索で得られる断片的な知識だけでなく、冊子の隅々に目を通してみてください。思いがけない発見が、道を拓く鍵になるでしょう。
大学生活の主役は、紛れもなく皆さん自身です。授業選択から課外活動、アルバイトまで、全てが「自己責任」という名の自由を伴います。例えば、ボランティア活動に参加すれば社会課題のリアルを知り、インターンシップでは業界の裏側に触れられる。これらの経験が、「将来像」を具体化するヒントになるのです。しかし自由とは、孤独な作業ではありません。教職員や先輩、地域の方々との関わりが、皆さんの選択肢を豊かにします。本学で出会う仲間は、卒業後も生涯の友人となるでしょう。多様な価値観に触れ、時には衝突し、寛容さを学んでほしいと思います。
最後に、大切なことを伝えます。大学時代の最大の財産は「挑戦した経験」です。失敗を恐れず、興味のあることに手を伸ばしてください。スポーツで全国大会を目指すもよし、地域活性化プロジェクトを立ち上げるもよし、芸術活動で自己表現するもよし。全ての経験が、皆さんを「唯一無二の存在」に磨き上げます。大阪大谷大学での大学生活が、自らの可能性を解き放ち、社会と自分をつなぐ架け橋となるよう願っています。